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「幸せの行方」 その8 多田

2009.06.07 (Sun)

●ありきたりの嘘

ホテルのラウンジで檸檬茶を傾けていると、
何故だか懐かしく思える夫の笑顔が近づいてきた。
予定より随分と早く着いた夫と、そのまま、お昼の食事を済ませると、
二人の部屋に戻った。

北に向かった町並みが望める窓から、
都の様子を眺めている夫に、
ホテルの備え付けではあったが、
良い香りの楽しめそうな緑茶を入れると、テーブルに勧めた。

「昨夜はどうしていたの。」そう訪ねる夫に、
「大阪から帰った後友達とは会えなかったから、ホテルでゆっくりしていたわ。」

と ありきたりの嘘をなぜか上手につけていた。
少しだけ声が掠れたことを、夫はきっと気付かないだろうと思えた。

多田の自宅へは夕刻早く訪れる約束だった。
それまでの時間で夫が自分のことを求めてくれることも考えていたが、
思いもかけず、慣れているはずの京都の街を案内して欲しいとの声を掛けられた。

●媚薬

久しぶりではあったが、
花のような笑顔で二人を迎えた夕子は二人をダイニングに案内した。
上質なテーブルを中心にして、多人数での食事もできるダイニングは、
工夫をされた作りになっていて快適な宴が期待できた。
料亭から届けられた重箱を開くと、早速大吟醸の日本酒が注がれた。

病院経営者の末娘として育った夕子は、
医者になった二人の兄とは違い公認会計士を目標に大学に入学したが、
在学中に二歳下の多田と知り合い四年生の秋に男の子を出産した。
元々将来を嘱望された多田の子どもということもあり、
両親も反対することなく二人の結婚を許し、
夕子自身は一年間休学した後復学し卒業を果たした。
その後は実家で育児を続けながら専門の学校に通い、
税理士の資格を取得した頑張りやでもある。
大学時代はミスキャンパスにも選ばれ、
恵まれた容姿と気さくな性格で人気者でもあった。

食事が済み、大方片づけられたキッチンに順子を呼んだ夕子は、
よく冷えたシャンパンを空ける準備をしていた。
けれどそのグラスに、
手元に置かれた紫色の瓶から掬い出した、何かしら白い粉末のものを溶かし入れながら、

「媚薬よ、知ってるでしょう。夫がイスタンブールから仕入れたの。
驚くほど効くはずよ。ふふ、順子 今夜 あなたきっと 失神するわ。」

冗談のようにそう言うと、驚いた順子の顔を見ないまま、
チェコのカットグラスを乗せた黒檀のトレイを運んでいった。

リビングでの二杯目のグラスが空くと、順番に浴室に向った、
順子のグラスは、勧められるままに注がれた三杯目のシャンパンが揺らいでいた。
しかし、火照るような身体の変化に充分に気付いていた。
あの薬のせいなのかしら。
胸に手をあてて大きな息を吐くと、それに気付いた夕子が嬉しそうな笑顔を見せた。
僅かの時間で、腰にバスタオルを巻いただけで戻って大柄な多田は、
学生時代のテニスのお陰だろうか、贅肉のない体格だと思えたが、
やはり恥ずかしくて、思わず視線を落とした。

雅彦が戻ってきた後、夕子に誘われて浴室に向かった。
無類の温泉好きである多田の要望で、
大きなガラス越によく手入れをされた箱庭を望む広い浴室は、
お客達には大いなるもてなしになっている。
岩風呂の風情で作られた浴槽も、
大人が三人で入ってもゆったりと手足を伸ばせるような広いもので、
多田の凝り性が感じられた。

今まで何回も泊まりがけの訪問をしたことがあり、その都度お風呂も頂いていた。
夫と入ることもあったが、夕子と一緒のことが多かった。

湯船に身体を沈めて箱庭の緑に目を向けると、
いつものように傍らに寄ってきた夕子は、

「 羨ましいわ。薫ちゃんができて、また 大きくなったのね。」

そう言いながら、順子の背中に滑り込んで、後ろから手の平を回してきた。
そして、乳房の重さを量るように持ち上げると、
指の間に乳首を挟みながらゆっくりと揉み始めた。
身体の芯にいつにない強烈な快感が湧き上がってきた。
順子の豊かな乳房は、小さな乳首の割には乳輪が広く、
少し嫌らしく感じられたが、
夕子のものはやや小さめながら、
モデルのそれのように美しい形をしていた。

「主人たら、私を抱きながらいつも順子のことを言ってるのよ。
あなたの胸を抱き締めたいって。」                      

と 後ろから熱い息を吹きかけてきた夕子に、
耳たぶを軽く噛まれて走りぬけた快感に背筋が反り返り小さな声が出た。

いつになく、順子の悪戯はしつこく続けられた。
固くなった両乳首は摘み出されるようにひねられ、順子に甘い声を上げさせたが、
日頃はない感じ方に、逃げるように湯船の縁に腰掛けると、
にじり寄った夕子に左胸の乳首を含まれ強く吸われた。
普通ではない真剣な様子に言葉を選び出せなかった。
それはなぜか、懸命とさえ思えた。
右の乳房も相変わらず夕子の手の平の中にあり、
彼女にいいように揉まれ快感を送りこまれている。
彼女の唇を胸から離そうとすると嫌と言うほど強く噛まれ、
悲鳴のようなか細い声を上げさせられたのと同時に、
身体の奥から、ついに恥ずかしい蜜があふれ出していた。

「ごめんなさい。お願いだから私の好きにさせて。」

返事を聞かないうちに夕子の左指は柔芽を探し出し、
嫌らしい動きを始めていた。
順子は閉じた瞼に赤い色を感じながら、
そんな夕子を、どうかしていると思ったが、
どうかしているのは夕子一人ではなかった。
その細い指に応えるように揺れ始めた自分の腰の動きが、
信じられないことのように思えていたのだ。
浴槽のお湯が波立って、微かな音を立てていた。

「あなたのものをもっと知りたくて、三日前に爪を切ったわ。」

二度順子を上り詰めさせた夕子は、ひくつかせる身体を知り尽くしたような動きで、
その麻痺が終わらない秘唇の中に、細い二本の指を滑り込ませた。
息も絶え絶えだった順子は、
身体の中で動き回る指から与えられる強い快感に身体を反らし髪を揺らし、
新たな喜びを求めて、正直に腰を振り始めていた。

恥ずかしい声をあげて上り詰めようとするとき、夕子がこう耳元でささやいた。

「今夜 多田は あなたを抱くつもりよ。許してあげてね。」

●僅かな光

机の上の携帯電話が僅かに振るえ、着信を知らせる小さなランプが光を見せた。
午前中の診察が終わり、少しだけほっとした時間で満たされている副院長室に、
珍しく多田からだった。

薫の誕生の折には、遠路夫婦で駆けつけてくれたし驚くほどのお祝いを貰っていた。
親友と呼んでも良い間柄ではあったが、申し訳ない気もしていた。

その多田の声は、永い付き合いの中で初めて聞くような沈んだものだった。
専門のせいだろうか、少し病的なものを察した。
中学時代から6年間ダブルスを組み、
たまにしか合えなくても気心は分かっているつもりだったが、
多田は沈痛な様子で話し始めた。
気分が沈みがちなんだ。ちょっと深刻なんだ。
この前は俺が相談にのったが、こっちはお前の畑だからな。

夕子の父親の病院に勤め、私立中学の寮にいる一粒種も優秀だと聞いている。
何ら心配のないようにも思われていたのに。

原因に思い当たるものはないかと訪ねると、
考える様子もなく、夫婦の生活が原因だと話しだした。
無論、二人の愛情に変わるものはないが、
仕事からの強いストレスのためだろうか、夕子を抱けなくなってしまった。
お前は笑うかもしれないが、どうにもならないんだ。薬も試して見たが上手くいかない。
夕子も心配してくれているが、そんな夕子を見ていることがまたつらく感じる。

沈黙の時間が流れると、雅彦は別のことで少しの焦りを感じた。
生まれるはずのない薫が生まれたことの理由を、
多田は既に察しているように思われていたからだ。
何をしたら順子に子どもができる。
そう、問い詰められれば、
専門である多田に医学的な回答をすることは不可能に思えた。
勿論順子が妊娠してからは、そのことに関して多田から尋ねられることはなかった。
夕子と二人、ガラス越しに薫を見ながら、目元がお前にそっくりだと言ってくれた。
ラケットを投げ捨て、殴り合ったこともあった。
最後の県大会の準決勝戦であえなく敗れたときは、
人目を憚らず二人で声を上げて泣いた。
昔と同じように、こいつはいい奴だ。と、薫を見ている多田に感謝した。

長い沈黙の後、多田の言葉がゆっくりと流れた。

「僅かだが、光がある。なぜだか、その人のことを思うと兆しが生まれるんだ。」

あっ と 声がでそうになった。
そして、すこしだけ、携帯電話を持つ右手が震えたような気がした。
そんな雅彦を見通したように、言葉が続いた。

「言い辛いが、その人とは、順子さんなんだ。」

妻を多田に抱かせる。
しかし今度は慶彦の時とは違い、
自分たち二人を納得させる仕方のない大儀名文はないばずだが、
自分たちの秘密を知っているであろう多田に沈黙を約束させるために、
彼が望むように、順子の身体を差し出すしかないとも思えた。
そして、それ以上に、
苦悩した結果の回答だった慶彦との時とは違い、
血の繋がりのない多田ということが、あの時以上に自分を熱くさせたのも事実だった。

とうとう 順子には話せないまま今夜を迎えていた。
話せば又難題を強いて辛い思いをさせるのはわかっていた。
しかし、今夜がどんな夜になるのか知らないままの妻が、
猛々しい多田のものを受け入れるのかと考えるだけで、
軽い目眩を感じるほど、自分が興奮することがわかった。
妻を愛していることは紛れもないことであった。
けれど、その妻を他人に委ねることで生まれる異常ともいえる高ぶりを、
雅彦は忘れてはいなかった。

●多田

抱きかかえられるように浴室から出てきた順子は、
いつの間にか明かりの落ちたリビングから隣の和室に運び込まれた。
京間の畳には上質の寝具が並べられていて、枕元の和紙に包まれた明かりは、
柔らかな茜色の光で部屋の中を薄く照らしている。

寝かせられると裸の身体に羽織っただけの黒いバスローブの前が開き、
白い胸元と太股が覗いた。
夫と自分のために用意されたこの部屋で、
これから何が起こるのか、混乱した順子には予想することは出来なかった。

夕子は絡めていた腕を解きゆっくりと離れると、
恐ろしいほど敏感になっている順子の身体を、置き去りにしたまま和室から出て行った。
燃え上がった身体は、一本一本の髪の毛先までと思えるほど、
身体中が性器になってしまったように敏感に感じ、
朦朧とした中で熱い息を吐くと、そんな感覚の鎮まりを待つことにしたが、
思うようにはいかないと思えていた。

あの お薬のせいだわ。
夕子がシャンパングラスに溶かしていた、怪しげな白い粉末が目に浮かんでいた。
きっと 恐ろしい薬なのかもしれない。
僅かにそんなことを思った時、
それまで傍らに近づいたと気がつかなかった、多田の重たい身体が覆い被さってきた。
息が詰まりそうになったが、
それ以上に驚いて両手を彼の胸板にあてると、
無理だとも思えた僅かばかりの抵抗を試みていた。
けれど、彼の逞しい腰に押し開かれた順子の両足の中心には、
これまでに経験のないと思われる太く熱いものが押しつけられ、
それまでの潤いのお陰で、その進入を僅かに果たそうとしていた。

意識が戻ってきた。
そして、おびただしく溢れて敏感になった秘唇が大きく押し拡げられ、
多田の熱い欲望を飲み込もうとしていることがわかった。
「いや。」
抵抗は空しく思えたが、せめて声だけでも夫に聞かせたかった。

思いもかけず、隣のリビングから夕子たちの声が聞こえた。
その緊迫した言葉から、二人が既に繋がっていることが思われた。
そして、その声と喘ぎといたたまれないような息遣いを聞いたその途端、
それまで懸命に拒んでいた多田の太いものが、
順子の身体の奥に、あっさりと根元まで滑り込んでしまっていた。

胸を大きく反らし仰け反った順子の姿態は、
彼のものが本望を果たし、望んでいた最も奥まで届いたことを教えていた。
それでも多田は、更に奥に自分の情熱が届くように、探るように腰を進めてきた。
息が止まっていた。
多田のものは、
これ以上無理だと思えるほど順子のものを押し開きながら奥まで来ていて、
夕子からの悪戯で燃え上がっていた身体は、
それだけで気を失うほどの快感を、順子に与えていた。
両手でシーツを強く握りしめて、その太さと快感に耐えた。
けれど大きく開いた口は、
自分でも聞いたことのないような獣のような声を出していることがわかった。

自分のものをこれ以上ないところまでしっかりと繋ぎとめた多田は、
シーツにあった順子の両手を握りしめると、
顔を寄せ唇を求めてきた。
荒い息は続いていて、彼の熱い息が順子を包んだ。
できるはずもない多田との口づけであったが、
自分が完全に多田のもので射抜かれたことで、もう許すしかなかった。
濡れた唇の隙間からずるりと舌が滑り込んでくると、
逃げ惑う順子の可愛らしい舌を追いつめ、
勝ち誇ったように絡みゆっくりとその味と感触を味わい唾液を啜り上げた。
そして、それと同時に本格的な腰の動きが始まりだした。

思いも寄らないことに困惑していた順子は、
多田のなすがままに身体を突き揺さぶられていた。
けれど、順子が求めてもいない喜びへの上昇に向けて身体は正直に反応していた。
多田はその長大な肉塊の先から根本までを充分に活かし、
ゆっくりと、しかし、深い動きで、
順子の身体のひだと潤いと、
そして、自分のものに絡みつく締まりを存分に味わい、
満足したように身体を起こした。

自分を奮い立たせていた順子の裸身が、今眼前にあった。
闇目にも輝くような白い肌と夢にまで見た揺れ動くたわわな乳房。
そして、自分の薄黒いものをくわえ込んでひくつく秘唇。
それらを今自分の手中に完全に納めたことがわかった。
乳房に手を伸ばした。その張りと柔らかさを手のひらに感じた。
唸りのような声を止めることができなかった。

多田の乳房への執着は少し異常で暴力的だとも思えた。
繋がったまま背筋を曲げた姿勢で続けられたその行為は、
激しい愛撫が白い肌に手の指の跡を残すのではないかとさえ思えた。
両方のふくらみを握りつぶすような行為では、
強い痛みさえともない声をあげさせられていたし、
情熱は唾液で光る濡れた乳首にも及び、
噛み千切られるとさえ思われるほど、強く歯を立てられた。
けれど、痛みの感覚より、それらから生まれる鋭い快感の方が遙かに勝ってもいて、
順子は正直な自分の身体と多田の情熱のまま、身体を委ねるしかなかった。

一晩中でも繋がっていたかったが、
興奮と思いもよらぬ強い締め付けに堪え性を失い、
思い描いた夢の最後の締めくくりに向かって腰の動きを早めると、
熱い息を吐き耳たぶを噛みながら呟いた。

「パイプカットをしているんだ。心配しないで。」

目が開いた。
既に夫だけのものしか知らない身体ではなかったが、
多田の液を受け入れることはできないと思えた。
なぜか、そこまで許したら夫に申し訳ないようにも思えたし、
身体が汚れるような感じを強く思った。
身体をひねって逃れようと試みたが、
うなり声を上げだした多田は許してくれるはずもなく、
最後の激しい腰の動きを始めていた。
このまま彼の液が自分の奥に注ぎ込まれることを想像した瞬間、
ついに始まった液の噴出と上手に合わせるように身体の奥の強い収縮が始まり、
息が詰まるほど抱きしめられながら急激に上り詰めていった。

●二つの卵

随分と遅くなった朝、夕子と朝食の準備をしている。
情熱的だった主人たちには、卵を二個奮発した。
サラダの盛り付けをしているときに、
ダイニングカウンターの隅に置かれた紫色の瓶に気が付いた。
昨夜の怪しげな白い粉末が入っている瓶だった。
手が止まり、それを見ていることに気付いた夕子は、笑いながら説明を始めた。

 「まあ 信じてたの。媚薬なんて嘘に決まってるわ。
ひと月まえ、口内炎ができそうだったから、
  主人にもってきてもらったの。
ほら、ただの ビタミン剤よ。
媚薬なんてあったら、百万円出してもあの人に飲ませてるわ。」

順子の背後に回り身体を寄せながら夕子は続けた。

 「でも、これ、あの人にはもう必要ないわね。
だって、多田はあなたという媚薬を手に入れたのだから。
  本当にごめんなさい。
でも、昨日みたいにこれからは又、時々会いたいわ。
  あっ。来月、新潟の仕事に私もついて行くの。
帰りは電車にするから、順子のお家に泊めてね。
ああ この媚薬も持っていくから。」

耳の後ろからの熱い息の中に夕子の言葉を聞かされたが、
最後には耳たぶを優しく噛まれ、頷きながら身体を震わせていた。

●おだやかな時間

午前中の柔らかい光の中で、薫はすやすやとおとなしく眠っている。
小さな可愛らしい右手には、人参のステックが握られていた。

順子はそんな薫を優しげな眼差しでダイニングから眺めながら、
檸檬茶の最後の一口を飲み干した。
もう直ぐ1歳を迎える薫の成長が今一番の楽しみであり、
その母親の気持ちのままに、健やかなに育ってくれている薫。
レース越しの穏やかな日差しの光景は、それはそのまま順子の心中のようだった。

ソファーに腰掛けると、昨夜の営みが思い出された。
同じところに座っていながら、
その時は順子の下半身を隠すものは一片たりともなかった。
浅く座り両膝を高く上げさせられ、
そして、これ以上開かないと思われた太股の中心では、
夫の舌がいやらしい音を立てていた。

その姿勢のままで、上り詰めることを告げた。
差し込まれていた夫の二本の指は、順子の締め付けをきっと感じたはずだった。

薫が何か言ったと思い、我に返った。
知らない間に右手のたなごころがブラウスの上から、胸を這っていた。
緩やかな快感を求めて、少しだけ強く乳房を揉んでみた。
身体の芯に僅かだがはっきりとした熱を感じた順子は、
大きな息を吐き、ブラウスの中に手を滑り込ませた。
下着のホックを少しだけ焦りながら外すと、
今だけは、自分だけのものである乳房が、ゆっくりとこぼれ出る。

下から持ち上げるようにして乳房を揉み始めた。
乳房が少しづつ張りを持ち始めるのを感じながら、
固く姿を変えつつあった乳首を優しく摘むと、
それまで以上の快感が、湧き上がってきて少しだけ声を漏らした。
身体の中に恥ずかしい蜜が満ち始めたことを、はっきりと感じさせられていた。

他人にもそして夫にも見せられない、
恥ずかしい時間に身を委ねることにした順子は
スカートをソファーに置き下着を抜くと、長い両足を伸ばしゆっくりと開いた。
濡れてひんやりとしたところに指を添えると、
自分で自分を焦らすかのように、微かに掠るように撫ぜてみる。

細い二本の指先が柔芽を掠めた。
ただそれだけなのに、予想したように甘い快感が全身を走った。
甘い声が出るのを拒めなかった。
乳首を摘んでいた手のひらで口を押さえたが、
思い出したようにそのまま指をうっすらと開いていた唇に当てると、
そこからも薄い快感が生まれた。
その快感をしっかりと全身で感じることを求めた順子は、
二本の指先を柔芽にそっと当てると、
添えた指を、求めた高まりに向かって振るわせ始めていた。

喜びは暫くもしないうち、順子の思うがままに訪れようとしていた。
気持と身体の要求のままに指を滑らせながら、
高まり始めた感覚の中で、心に浮かんでくる顔を思った。

「ごめんなさい あなた。昨日あんなに愛してくれたのに。」

そう思えた夫の顔に重なりながら慶彦の顔が浮かび、
かつて自分を狂わせた彼の肉塊と、
その先から吹き出した白い愛の液が思い出された。
しかし、慶彦の次に浮かんだ、懐かしい顔を思い出した途端、
順子は急速にそして激しく上り詰めた。
そして、自分に訪れた予想しなかった強い喜びを更に高めるために、
右手を激しく動かしながら、
左手の二本の美しい指を、
その男の人のものを求める熱い身体の中に滑らせ入れていた。
背にしていたソファーと足の爪先だけを支えにして、
背中が反り上がり、そして、腰が高く跳ね上がった。
何も考えられなかった。
柔らかい陽に満たされたリビングで、
真っ白な喜びの世界が順子を襲い、か細い声を上げさせていた。

柏木の優しい笑顔が浮かんだ時、
思いもよらず激しく上り詰めた時の自分の姿を思った。
あの時、それまでとは違う新しい蜜が、
自分の身体の中に溢れたことがわかった。
そして、夫でもない。慶彦でもない。多田でもない。
たった二回だけ肌を合わせあった、ここにはいない柏木のものを求めて、
自分の身体の奥を強く収縮させながら、
いやらしく腰を振りたててしまった自分のことが、切なくてならなかった。

庭先で鳴く小鳥のさえずりが、聞こえてきた。
呼吸が戻ると同時に、うっすらと涙を滲ませた目で薫を見た。
さっきと同じ様子で、柔らかな光の中に包まれておとなしく眠っている。

穏やかな時間は先ほどと同じように、二人の周りをゆっくりと流れ続けていた。


16:57  |  「幸せの行方」  |  Trackback(0)  |  Comment(0)
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