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「幸せの行方」 その11 文豪の宿

2009.06.07 (Sun)


薫の誕生日が近くなっていた。
この一年間周囲の人の愛情に包まれて、
これといった病気もせず健やかに育ってくれた。
穏やかな季節に生まれたことも幸いしたのだろう。
薫を生んでからも、義両親や光子、そして、雅彦に助けられながら、
母親としてこの家の嫁として自分自身も随分と変わったと思う。
少なくとも、自分ひとりしか知らないことを考えなければ。

家族が増えてから夫婦の関係も変わることはなかった。
雅彦はそれまで以上に自分のことを愛してくれていたし、
薫にも当然ながら父親としての深い愛情を注いでくれている。
出産後初めて夫婦の営みを交わしたとき、
順子はそれまでにない強く深い喜びに驚きさえ感じた。
それは、薫という子どもを授かったことからくる、
精神的な安らぎからくるものだろうとも思えた。

表面上は平穏な生活の時が流れ過ぎていたが、
順子の心を曇らすものがないと言えばそれは嘘であった。
朝から夫を送り出し、一日を薫と過ごし、
時折習い事にでかけ、ホテルのラウンジで僅かな憩いのひと時を感じる。
それは、薫が中心の生活ではあったが、
母親として平和な時間でもあると言っていい。
ただ、それらの平穏な時間の間に、
感じてはならないとも思える感情が、
心に忍び込んできていることを順子も意識しだしていた。

忘れきれないでいた。
柏木のことを。
初めて会ったラウンジ、やはらかなフラッシュの中での二人、
柏木の部屋、やさしい笑顔。
いつも自分を包み込んでいた、
今ここにあるはずの無いあのよい香り、
そして同時に、そんな彼と一緒にいたいろいろな場面が、
順子の心に浮かぶ時間が徐々に長くなってきていた。
それは、寝室のガラス窓を開けて、
雲ひとつ無い澄み切った空を見上げた早い朝の時もあったし、
夜お気に入りの下着を身に着け、姿見に身体を映した時でもあった。
思ってはいけない感情が突然と湧き上がる事に、
順子はこれまで経験したことのない、強い戸惑いを感じていたのだ。


思えばこれまでに、
本当の恋をしたことがあったのだろうか。
幼稚園から大学まで女子校で過ごした。
高校時代の友人たちの恋の話を興味深く聞くことはあっても、
それは、自分とはひどくかけ離れている遠い場所での出来事のように思えた。
恋に恋する時期はあったが、
実際に胸を焦がすような気持ちは理解できないでいたように思える。

雅彦との結婚でさえ、
不確かなように思えていた。
遠縁ということで両家の親たちが許婚のようにして勧めた結婚であり、
何の違和感もなく当然のように一緒になった。
けれど、そこにもやはり、
心躍る高ぶり時間の記憶は見つけ出せないような気がしていた。

それが、今度だけは違うように思えた。
髪を揺らして彼の記憶を振るい払おうとすればするほど、
心の中の彼の笑顔は更に鮮明になるような気がしていた。
本当の恋とは、こんなものではないだろうかとも思えてきていた。

北陸のこの街にも、いつもと同じような短い夏が訪れようとしていた。

●お祝いの夜

もうすぐ夕暮れに包まれようとする街が、
お化粧をするように、ひとつ、ふたつ色のついた明かりを点け始めていた。
そんな街の様子を眼下に眺めることができるホテルの最上階で、
薫の誕生日のお祝いが開かれていた。
事務長が世話をしてくれたこのホテルでよかったと思えた。
日ごろは街で一番格式のある古くからのホテルを使うのだが、
たまには趣向を変えてと、このホテルにしたらしい。

強いライトに照らされながら来賓の祝辞が続いていた。
市長は公用で出席できなかったものの、
院長や雅彦と顔見知りの県議がお祝いを述べている。

薫の誕生日を喜んでいただくのは嬉しいことではあったが、
ここまで大げさにしなくても、とも思えた。
しかしそれは、嫁が口を挟むことではなかった。
伝統と格式を重んじるこの街で、
大規模の病院を二つ、
そして特別老人ホームとそれらに関わる多くの施設を経営する一族としては、
行政関係者と深い関係を結んでおくことは至極当然のことなのかもしれない。

雅彦に続いて薫を抱いた順子がステージに上がると、客席から小さな声があがった。
それは、薫の可愛らしさと同時に、
順子の美しさに対して寄せられたものであることが感じられた。
濃い加賀友禅の着物は、色の白い順子をよく引き立てていた。

お祝いの席のために、院長が着物を奮発してくれていた。
それも院長婦人を初め、順子と静子、そして、光子にまで。
新調したばかりの見るからに高価な加賀の着物が立ち並び、
今夜は薫の誕生会というのに、
周りの女性たちが実に華やいだ様子でありそして上機嫌であった。

お開きになった会場から帰宅したのは8時を過ぎていた。
薫も周りの喧騒に疲れたのだろう、
寝室のベビーベッドですやすやと寝息を立てている。
階下に降りてくると飲みすぎた雅彦が、ソファーで寝そべるようにしている。

小さいころから改まった席では着物が当たり前で、
高校を卒業する頃には一人での着付けもできるようになっていたし、
最近は義理母たちの着付けも手伝うことが多くなっていた。
そんな順子にとって、着物はそれほど窮屈には感じられないが、
やはり、衣紋掛けに袖を通し、洋服に着替えるとほっとした。

「多田から誘いがあるかもしれないね。」

目を閉じたまま、雅彦がぽつんと口を開いた。

「今夜は駄目よ。 断ってくださいね。」

多田たち夫婦が、薫のお祝いに遠路来てくれてはいたが、
会えば只ならぬ夜になることは間違いなかった。
なぜかあれほどまでに多田のものに狂った自分が恐ろしかったし、
そんな自分の姿を見せてしまった夫に申し訳なかった。

今夜は薫のお祝いの夜でもある。
良き母親でありたかったし、良き妻でありたかった。

けれど目を閉じた雅彦は、口を結んだままであった。


●文豪の宿

「残らず、飲むんだよ。」

順子の豊かな乳房がつくる谷間に、
自分の反り返った濡れたものを擦り付けていた多田は、
掠れたてはいたが、
まるで命令するかのような太い声を吐いた。

朦朧とした意識の中で、
今の自分にはそれが断われぬことだと納得するしかなかった。
言われるがままに、
夫ではない多田の男の印を飲み下すことは、
身体を繋げる以上に、そして、身体の奥でその液を受け止める以上に、
雅彦の妻であるはずの自分にとっては不貞の感が強く感じられた。
飲み下してしまえば、多田のものが身体隅々にまで滲みわたる。
それは、この時だけのことではなく、
そのことによって染め上げられた自分が、
はっきりと多田の女になることのように思えたのだ。

そんな順子の狼狽した様子と快感を楽しむかのように、
その先から透明な液をしたたらせた多田のものは、
彼の執拗なまでの愛撫のために、
尖るように固くなった乳首を何度もなぞり、
嫌らしく濡らしていったのだった。

薫の祝いの夜遅く、
順子にとっては心配していた夕子からの連絡があった。

 「多田が我儘を言っているの、ごめんなさい。明日会えるかしら。」


次の日の夜、
順子たちの街から暫く南下したところに、
多田が旅館の部屋を予約していた。
雅彦の車の助手席に夕子が乗り込んいるのを見て、
困った表情を見せた順子を、既に後部に座っていた多田が誘った。
そして、座ると同時に当然のように手を握り締めてきた。
夕子も雅彦の耳元で何かを呟いている。
まるで、お互いのことを何もかも知り尽くした夫婦のような振る舞いだった。

最近まで有料であった橋を渡ると、文豪に縁の旅館に到着した。
住み慣れた街から少し近すぎるのではないかと、
順子が心配したのは杞憂だったのかもしれない。
当たり前のように多田と順子が女将に丁重に案内された部屋は、
二人では明らかに広すぎる上部屋であった。
月見庭園や檜の露天風呂までついた部屋は、
雅彦や薫と一緒であればさぞや寛げたであろうに、
そんな部屋の広縁で、
息を弾ませた多田の唇から逃れようとして悶える順子の姿があった。

 「明日帰るまで、誰も来ないから。」

多田はそう言うと、当惑して立ち居地を図りかねている順子を、
我が物にしようと抱きしめにかかっていた。

 「もう、かんにんして。」

そんな順子の言葉の続きは分厚い多田の唇が遮り、
不覚にも舌の進入を許した口内では、
逃げ惑う小さな彼女の舌を容赦なく吸い立てていた。

 「ほら、この間みたいに。」

ワンピースの上から焦るような多田の掌で胸を揉まれながら
靄がかかり出したような意識の中で、
気持ちとは裏腹に多田から誘われる通り、
身体が熱を帯び始めたことを思い知らされるしかなかった。


多田は順子の両手を取ると、左右の乳房を両脇から寄せるように求めた。
言われるがままにするしかなかった。
多田は自分の肉径をその間に挟みこむと、
その深い谷間の柔らかさ楽しむようにゆっくりと腰を揺すり始めた。

すでに、多田の欲望の液を身体の奥に注がれていた。
お湯を使う間もなく更に求められ、身体の奥にそれは残されたままであった。

抱かれるその瞬間までは、
あれほど苦悩し身をくねらせて抵抗をしたというのに、
一度それを受け入れてしまった後では、もう彼の成すがままであった。
彼のものが身体の一番奥に届くように自分から白い太ももを広げ、腰を振り、
別人のように恥ずかしい声を上げて、
彼が愛の液をくれるように泣きながら懇願した。
彼が声を上げてその液を迸らせたとき、
順子は大きく裸体を仰け反らせながら、
彼女自身が望んだように激しく上り詰めることを彼に伝えたのだった。

自らのおびただしい透明の液が順子の胸を濡らし、
それが至極快感だったのだろうか、
いくらもしないうちに危うなりはじめた多田は、
その太い二本の指を順子の口に差し込むと唸りながら腰を動きを早めた。

無論初めてのことではなかった。
雅彦のものを受け入れられない時期には、
その愛液を飲むことは妻としての努めだと思っていたし、
京都の夜に犯した桂一との過ちもあった。
けれど、そんな困惑する順子の胸の内を無視するかのように、
か細い声を上げた多田は、
その硬く太く膨らんだこわばりを順子の唇に押し当て、
そして、押し開らき、
そして、突き進み、
そして、解き放った。

今日二度目の噴出というのに、
塊のような多田のものは喉の奥を打った。
そして、その瞬間、
順子の身体の芯を鋭い快感が走り、
雅彦の時と同じように逞しい多田の裸の腰を両手で引き寄せると、
美しい長い髪を振り立てながら懸命に舌を使っていた。

強い匂いを放ったそれは、
順子の狭い口の中に収めきれぬ量が放たれ、
困惑した約束の通り、無念の中で飲み下すしかなかった。
粘り気のあるその液は、
順子の喉を永い時間をかけて伝い流れているようでもあった。

顔を横に向けて咳き込む順子の唇の端には、
僅かに収め切れなかった白いものが見えていたが、
それは、多田の指でなぞられ、
その指は順子の舌が舐め取るように仕向けられた。

無論雅彦には言えない、取り返しのできない夜であった。
けれど、多田のものを飲み下しながら、
思いもかけず身体の中では鋭い快感を感じたのも嘘ではなかった。

治まらない荒い息遣いのうちに、
順子は熟れ始めたであろう自分の肉体を思った。
こころはそうでなくても、
自分の身体が、男の人のものと、
男の人の液を最も求める時期にあることは、
きっと間違いないことのように思えたのだ。


多田が自分の身体をやっと放してくれたくれた後、
部屋にある檜の露天に浸かった。
うっすらと唇の跡の付いた乳房を、
雅彦はどう思うのだろうか。
女の部分にも、
沁みるような僅かな痛みを感じながら、
今日、この部屋でのことを思った。

多田のもので喜びに達することを、数え切れないほど告げた夜だった。
この宿を出る明日の昼まで、
自分は多田の妻として何度抱かれ、何度喜びの声をあげるのだろうか。
そう思うだけで、
新しい蜜を滲ませ始めている自分の嫌らしい身体を、
順子はどうすることもできないでいたのだった。

薄紫の雲に隠れるようにしている月が、
順子の白い裸身を淡く照らしていた。


寝室に入ると、多田が僅かに寝息を立てている。
その裸の胸に何ら躊躇することもなく羽根布団を掛けようとすると、
その気配に気付いて目を開いた多田が順子の身体を引き寄せた。
小さな声を上げて身をくねらせたが、
羽織ったばかりの浴衣を脱がされ、そして、やさしく抱きしめられ、
二人は何も身に着けるもののない姿のまま、
営みを終えた後の仲の良い夫婦として、穏やかな時間を過ごすのだった。


時折、自分の乳房に掌を感じたものの、
多田の腕枕の中での静かな夜が明けようとしている。
順子はそっとベットを抜けると、
朝方の新しい大気の中、月見庭園で佇もうと縁側に向かった。
上がり口には黒い鼻緒と赤い鼻緒の、
二組の上質の下駄が仲良く並べてあり、
それは、今の自分が、
言うまでもなく多田の妻である証のように思えたのだった。




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