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「幸せの行方」 その6 恋人たちの夜

2009.06.07 (Sun)


● 雷鳥

「雷鳥」の名を持つ特急の僅かな振動に揺られ、久し振りの京都に向かっていた。
シックなブラウンカラーのシートは、
一人用と二人用に別れていて、随分とゆったりとしている。
残念なことに穏やかな日本海の景色が、もう直ぐ視界から消えようとしていた。

「多田夫婦がたまには京都に出てきてくれと言っている。
薫は実家に預けて行けるだろうか。」

そう 雅彦が言い出したのは一週間ほど前のことであった。

多田にはできれば会いたくなかったが、
検査をしてもらった時の悪い印象は薄らいでいたし、
薫の誕生では沢山のお祝いを頂いていて、断るわけにはいかなかった。

実家のほうでは、喜んで預かるとの返事で、
そろそろ摑まり立ちを始めた薫のために、
さっそく何か新しい玩具を買っておこうと、算段を始めていた。
毎日のように光子に抱かれ慣れている薫は、
二泊程度であれば、まったく心配はないように思われた。

ところが三日前になって、
テーブルにグリーン車の乗車券を置いた雅彦は、
「急な会合が入ったので、先に行って一泊目は友達とでも会っておいてくれ。」
と申し訳なさそうに、切り出した。

車内販売で求めた紅茶が振動で僅かに波立つのを感じながら、文庫本に目を移した。
午後の早い時間に裕子さんのお店に寄るために大阪に向かうことにしたが、
この3時間という時は、
順子にとって久し振りに一人を感じることのできる安らいだ時間であった。

ハンドバックには、裕子さんの店から送られてきたポストカードが入れられている。
お得意様に向けた趣味の良いスカーフのプレゼントも楽しみだったが、
残念だったのは、余白に書かれた裕子さんの達筆な一言の内容だった。

「都合でお店のひとつを閉めることにしましたが、
こちらの店はこれまで通り営業しますから、引き続きよろしく。」

事前に予約をしていなかったので、裕子さんには残念なことに会えなかったが、
こんど閉店したお店でチーフをされていた方が、ゆっくりと相談に乗ってくれ、
雅彦と二人分の趣味の良いセーターを六着と、
春物のドレス三着を自宅まで送ってもらうように手配してくれた。

京都に戻り、ホテルまでの道をゆっくりと学生時代の思い出に浸りながら歩いた。
着いてから連絡した友人には、向こうの都合で会えないことがわかり、
時間を持て余していた。
こんなことなら薫と一緒にいたほうが良かったと、
子どもの顔が思い出され母親の気持ちに戻ってもいた。

桂一のことが少しだけよぎったが、同時に過ちのことも思い出され、
連絡することさえためらわれた。

まだ、夕刻にさえ充分に時間があった。
ホテルはもうすぐだったが、部屋に入ってもしかながないと思え、
五条通りにでた曲がり角で、なんとなく清水寺の方向に方向を変えていた。
これといって当てはなかった。
導かれるように、自然に足先が向いていた。

何気なくいくつものお店を覗きながら歩いている途中、
通り過ぎた後に、小さな声を上げて数歩戻った。
驚いたものが目に入った。
それは、まぎれもなく、自分の裸の写真だった。
上手にフイルターがかかっているため、
その写真を見つめている彼女が、
実はその被写体であることがすぐにわかる人はいないだろうが、
自分の身体を知っている人であれば、それとわかることだろうとも思えた。

改めてお店を見上げると、さらに小さな驚きが訪れた。
そこは、あの「柏木」の写真スタジオであった。

柏木がこの街にいることを忘れていたわけではなかった。
しかし、あの日ことは、もう随分と前の出来事だったように思えることもあったし、
逆につい最近のことにように思えることもあった。
恥ずかしい姿勢や、舌の感触、漏らしていたであろう甘い声が思い出されて、
身体を熱くしたことが幾度もあった。
それは、夫のために食事の準備をしているときでもあったし、
薫にお乳を含ませるために、胸を開いているときでもあった。
遠い昔愛し合っていた恋人のことを思い出すように、
ふいに 柏木のことが、浮かんでは消えていた。

慌てながらも早くこの場所から離れなければ、とそう思うと、
最後にお店の中に目を向けた。
しかし、
驚いた顔でこちらを向いている柏木と、しっかりと目を合わせてしまっていた。




「困るわ。こんなところに私の写真を。」

そういいながらも、
本当に困ってはいない様子を順子の笑顔に読み取った彼は、
お昼がまだなので付き合って欲しいと、
小ぶりなバックだけもって、
まだ、挨拶もろくにしていない順子をタクシーに押し込んだ。
懐かしい、良い香りがした。

鴨川沿いの古い別館まで歩いても良い距離をタクシーは走り、
夏には納涼床が組まれるであろう川べりが見える個室に順子を通した柏木は、
あれからのことを静かに話しだした。

「あの時話していた作品集の続編を、春に出版したんだ。
 一番良く撮れたあなたの写真を店の前に置かせてもらっているよ。」

作品の現像が終わり、写真集に載せる作品を一緒に選んで欲しいと思ったが、
その時になって自分が、順子のことを何も知らないことに気が付いた。
あの街で生まれ生活していること。結婚をしていること。
紅茶が好きなこと。せいぜい その程度であった。
かろうじて、夫は勤務医をしていると話してくれたことを思い出し、
医者をしている友人の会員録から、やっと自宅への連絡先を探し出すことができた。
が、そこまでで 止めた。
また 会ってどうすると言うんだと思えた。
まさか、写真集を渡すわけにはいかないし、
残念だったが、電話番号は捨てるしかなかった。

「あそこに飾っておけば、いつかあなたが、来てくれると思っていた。」
永い隔たりの時間が僅かの間に見事に埋まったような気がした。

「そうか、母親になっていたんだね。」
彼は独り言のように少し寂しげにつぶやいた。
順子は何故だか一度目を伏せたが、
気を取り直すようにもう一度ゆるやかな都の川の流れに視線を戻した。

懐石料理が運ばれてきて、柏木には遅い昼食が、
そして、順子には早い夕食が終わると、
まるで、当たり前のように、又 タクシーに乗せられた。
二人きりになりたいと言う彼の誘いを断ることはできなかった。
夫は早くても明日昼過ぎの到着だから。
今夜予約してあるゆったりとしたツインであるホテルの部屋へとも考えたが、
口に出すことはためらわれたし、
そんな大胆なことを言う女になった自分を、知られたくもなかった。

タクシーから降りた場所は、
石畳の道に町家が続く、典型的な京都の町並みの中であった。
柏木は慣れたようすで格子戸を開けると、順子を誘った。
自宅だと招きいれた家は、表は見慣れた町家の趣きであったが、
中は随分と手が入れられていて、
見世庭と玄関庭以外はすべて良く磨かれた黒い板間に変えられていた。
生活感があまり感じられないことを訪ねると、
彼が仕事に行っている間に人がきて、
清掃や片づけを済ませてくれているそうだ。

玄関庭から中の間に上がった。
懐かしい良い匂いが順子の身体を包んだ。
表通りに接する部屋は、多くの写真機材が整然と並べられていたし、
奥の部屋にはモダンな応接セットと数台のパソコンが置かれていた。
物珍しそうに辺りを眺める順子を背後から抱きしめてきた柏木は、
前に回した手を両胸に当てると、首筋にその唇を這わせてきた。

数年ぶりの逢瀬であった。
そして、子どもを産んでから、
初めて夫以外の男性に抱かれる夜になることは、きっと間違いないと思えた。
不思議に心を痛みは感じなかった。
昔からの恋人との出会いのように、
彼の両手の動きにも、唇の動きにも無抵抗である自分を許していた。
思わず自分から柏木の正面に向き直すと、背伸びをして唇を求めた。
濡れた彼のものと熱い呼吸を唇に感じ、
差し込まれてきた懐かしい舌にもむしろ自分から応じていた。

子どもを産むことで、子どもを育てることで、
過ちには終止符が打たれると思っていた。
慶彦のことなどで混乱していた自分が犯した間違いは、
あくまでも遠い昔のことのように感じられた。
それなのに、今こうして、
柏木の手に、いいように乳房を揉まれながら、
そして、狂おしくお互いの唾液を啜っている自分の身体に、
どうしようもない高ぶりを感じていた。
静かに身体を横たえられながら、順子はゆっくりと瞼を閉じていた。

あの時と同じように、
唇と舌と指先のせいで、上り詰める声を数度告げていた。
呼吸が整わないままに、
大きく胸を上下させている順子の身体に、

「益々綺麗になったんだね。」

そう言いながら、彼のものがゆっくりと入ってきた時、
もうそれだけで気を失いそうな声を、柏木に聞かせることになった。

久しぶりの順子の身体を味わっていた。
前のことを思い出す必要もないほど、
今自分と繋がっている順子の身体は素晴らしいものであった。
目を閉じておとがいを反らせ喘ぐ唇。
耐えかねるように、シーツを強く握り締める両手の細い指。
母親になって、嫌らしいほど更に豊かになった乳房、そして大きくなった乳首。
白い肌は、前にも増して艶と張りに磨きがかかったようでもあった。

身体を覆い被せると下半身を密着して少しだけ動きを早めた。
お互いの恥毛が擦れ合い絡み合い、音を立てているように思えた。
自分のものをくわえ込んで、
溢れるほどの蜜を流している身体を感じながら、
この美しい人妻を、そして、その身体を、一度のものにしたくないと思った。
離したくない狂おしい気持ちが、心を満たしている。
僅かに二度目の夜というのに、この肉体に溺れていることは分かっていた。
しかし、肉体の欲望だけではないと思えた。
それが正直な気持ちだ。
やがて訪れる高まりの時をできるだけ深く楽しむために、
順子の太股を折り曲げると、更に奥にまで届くよう腰を揺らし始めた。

「あっ。」 朦朧とした意識の中で聞いたような気がした。
柏木は自分のものを秘唇から素早く引き抜くと、
順子の左の乳房に強くこすり付けてきた。
彼の身体に力が漲り、程なく塊のような白い液が勢い良く噴出を始め、
二度、三度うめく様な声を上げると、
その熱い飛沫は、強い匂いとともに順子の首筋や頬にも降りかかってきた。
幾度かの発作の中で、大量の液を出し終えた後も、
名残惜しそうな柏木のものは、順子の深い乳房の谷間を幾度も往復していた。
順子はそんな彼のために、何かしてあげることがあるのだろうかとも思ったが、
何もできないで荒い息をしたまま、
彼が自分の胸での動きを満足してくれるまで待つしかなかった。
谷間に溜まった液が、柏木の手の平でで乳房や首筋に広げられることも、
彼がしたい様にしてもらいたかったし、
彼の液に浸されることにむしろ僅かな満足感さえ感じていた。
その濡れた指先は順子の唇に添えられ、そのまま舌にまで届いた。
順子はそんな彼の気持ちのままに、
彼の液体で濡れたその指先に舌を絡ませながら懸命に啜りたてていた。

恋人たちの夜は、まだ 始まったばかりであった。


昨夜遅くホテルに送ってもらった後、一度バスルームを使っていたが、
起き抜けの熱いシャワーにも長い時間を掛けた。
身体の奥に山口の愛をそのまま注がれたことはなかったが、
髪の一本にまで、彼の匂いが残っていないように何度も洗い流した。

彼の情熱の跡がないか、手鏡をも使いながら体中を見直した。
昨夜彼の愛の液を、表面だけとはいえ体中で吸い取ったせいか、
鏡の中に見る肌はいつになく艶やかに白く輝き、
我ながら惚れ惚れとするほど美しかった。
たわわな胸に手を添えると、昨夜のことが思い出された。

彼との営みの中で、
豊かな乳房を下から揉み上げられる姿勢を始めて許してしまった。
言われるがままに、火の出るような恥ずかしい気持ちのまま彼に被さると、
自分の白い指を彼のものに添え、角度を探りながらその熱いものを身体に収めた。
奥まで届いたものを感じ、声をあげて彼の身体にかじりついたが、
暫くすると下から伸ばされた腕で、反り返るような姿勢を求められた。
幾度か髪を揺らして、出来ないと許してもらおうとしたが、
彼の逞しい腕が、順子の上半身を起こすことに時間は掛からなかった。

唇に入れられていた数本の指は唾液の光沢を残したまま両肩をなぞり、
腰の括れをつかみその突き上げの手助けとなっていたが、
最後には本望を遂げるように、
乳房を下から持ち上げる愛撫に移っていた。

夫との永い営みの時でも、自らこの愛の形を求めたことはなかったし、
順子が余りに恥ずかしがるせいか、雅彦の求めも稀な姿勢でもあったのだ。

下から突かれながら、首筋を上に反らすとはしたない声を上げていた。
胸には彼の両手が片時も離れることなく動き回り、
とろけるような刺激を与え続けている。
こんなにも、燃え上がっているのは、
彼のせいなのだろうか。
彼のもののせいなのだろうか。
彼に求めたれたこの姿勢のせいなのだろうか。
教えられたわけでもないのに、
いつの間にか順子の腰は前後に嫌らしく動き始め、
柏木のものに、絞り込むような快感を与え続けていた。

二度の愛を順子の身体に浴びせていたものの、
その感情は治まることはないように思えた。
彼の両手が、伏せていた腰をゆっくりと持ち上げた。
順子の顔は枕に沈んだまま、腰だけが高い姿勢になった。
初めて彼のものを受け入れた時もこうしていたことを思い出していた。
そのことを思うと、そんな恥ずかしい格好のままわずかな感慨にふけった。

両手がたわわな乳房を持ち上げると、暫くその感触を楽しむような動きを続けた。
醒めはじめたと思っていた全身に、
甘ったるい快感が広がっていくことを感じると同時に、
この人が満足するまで、その動きを続けてくれることを願った。
この人が好きなように、
この人が満足するように、
今の自分なら、なにもかも許してあげられるような気がしていた。

二度この人のしるしを身体中に浴びせられていたのに、
緩やかに入り込んできたものは、狂おしいほど順子の心を満足させていた。
この人のために自分の身体はあるように思えた。
少しの隙間もないように思えるほど、この人のものは自分の中を満たしていた。
夫に感じたことのないものが、少しずつ自分の心を支配しだしたことを、
順子は気付き始めようとしていた。

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