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「幸せの行方」 その1 一夜の妻

2009.05.29 (Fri)

● 1082号室

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「馬鹿な!兄さん、何てことを言うんだ。」
慶彦は端正な顔をゆがめながら、
手にしていたグラスをテーブルの上に置いた。
「自分の女房を抱いてくれと弟に頼む。確かに俺は馬鹿なのかもしれない。」
「兄さん達が子どものことで悩んでいることは知っているけど。そうだ、
 ほら、多田さんに相談してみるといい。あの人はそっちの専門じゃないか。」
そう言うと慶彦は、再びグラスを口に運んだ。
「あいつには、もう相談したよ。二人で検査にも行った。
 高校時代からの親友だ、親身に相談に乗ってくれた。
 でも、結局は、どうにもならんそうだ。それが結果だ。
 可愛い子どもに恵まれたお前には分からんだろうが、随分と二人とも苦しんだ。
 特に順子はな。そして結論はひとつしかなかった。お前に頼むしかないんだ。」
そう言うと雅彦は窓の外に視線を移した。
その先には、僅かに月光に照らされた北陸の海が横たわっている。

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「年子の俺とお前は小さい時から双子に間違えられるようによく似ていた。
 それに、同じ A型だ。」
「兄さん!。」
「これ以上言わせないでくれ。ただ、順子も迷っている。鍵が掛かっていたら、
 キーは使わないで、そのまま自分の部屋に帰ってくれ。」
雅彦はテーブルの上にある部屋番号の書かれたルームキーを慶彦の前に押しやると、
又窓の方に向き直り、そして、目を閉じた。
二人の間に、夜の海のような暗い沈黙の時が訪れていた。


● 1184号室

順子は、自分を包む暗がりの中で、
これまでの時間と、これからの時間を考えていた。
義父母、そして夫に可愛がられながら、
何不足のない生活を送っている。
ただひとつだけ、
子どもができないことから生まれた二人の隙間が、
少しずつ広がり始めていることは分かっているつもりだった。

そんな時 弟夫婦との旅行の話を持ちかけられたが、
主人が画策した中身を聞かされ、取り乱した。
「あなた以外の人に抱かれるくらいなら、死んだ方がましです。」
妻としてそう答えるしかなかった。
けれどその言葉にうなだれる夫の様子を見て、
今はこの人のためにできることをしてあげることが、
この人と、そして、この家と結婚をした妻の勤めとも思えた。

エアコンが効いて、シャワーを使ったばかりだというのに、
シルクのナイトガウンだけの裸の肌は、サラサラとした感じだった。
部屋のライトは消したものの、
カーテンの隙間からからは、淡い街の明かりが差し込んでいる。

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心も体も混乱していることを自覚していた。
こうして夫以外の男性に抱かれるために横になっていながらも、
はっきりとした決断は本当はまだできないでいるのだ。
それに、どうすれば良いのか迷いながらも、
驚くほどおびただしく濡れてしまっている自分の身体を、
恨めしくも思っていた。


● 低回

「ああ 静子さん 慶彦の奴ワインを飲みすぎて寝ちゃったよ。
暫く和室の方で寝かせといて。起きたら返すからね。
ええ 僕たちはベッドで休むから迷惑はしないし、
はい、おやすみなさい。」
雅彦は子どもたちのために早めに部屋に戻っていた義妹への内線を済ませると、
諦めた様子でテーブルの上の鍵を手にした慶彦を見送った。

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兄からの思いも寄らぬ話に、
混乱したままの気持ちで手のひらの鍵を握りしめていた。
予約しているという部屋はすぐ上のフロアで、
エレベーターを使うまでもない。
しかし、
これから自分はどうすればいいのか。
その迷いを払拭することはできないでいた。
ただ、そんな風に低回しながらも、
目に浮かぶ横たわった順子の姿に、
慶彦は身体を熱くしてしまっていることは、紛れもなく事実である。

学生のころから親しくしていた順子は、
血の繋がりはないものの遠縁ということから恋愛の対象ではなく、
親族の集まりの度に眩しく成長していく彼女を焦れったく眺め、
なんとなく自分を納得させることが常であった。
その順子が兄と結婚すると聞いた時も、
自分自身には身重の妻がいて特段感慨はなかった。
けれど、今夜は気持の高ぶりを押さえることはできない自分がいる。
その美しい兄嫁を抱けるのだから。
ドアのノブに手を掛けたその時、
慶彦の脳裏は、兄との約束ではないものが支配していた。

心の整理を付けるにはもう少し時間が欲しい。順子の正直な気持ちだった。
ドアの鍵を掛けてしまえば、少なくとも今夜は自分一人での夜が流れていく。
この部屋に入ってすぐにそうすれば良かった、と思い身体を起こしかけた時、
ドアの閉まる音が聞こえたような気がして身をすくめた。

部屋の闇の中に、人の気配が感じられる。
そして、それは自分が身を横たえているベッドにゆっくりと近づいてくる。
夫とも思えたその影は、その僅かの期待を裏切り、
「姉さん。」と声を掛けると、傍らに身を横たえ腕を伸ばしてきた。
僅かなお酒の香りとそれまで知らなかった不快ではない雅彦の匂い、
そして、暖かな彼の体温が自分を包み始めてきたのだった。


愛のかたち

雅彦は、改めて一人の夜を感じていた。
順風満帆とまでは言わなくても、悪くない人生を送っているはずだった。
医学部を出て、父親と親族とで経営している総合病院に勤めた。
両親の勧めで、
昔から馴染みでもあった遠縁の順子と結婚したのは30を過ぎてからだ。
女子大を卒業した後、暫く嫁入り修行をして嫁いできた順子は、
息子二人しかいなかった両親に、
実の娘のように可愛がられ、幸せな数年の時を過ごしていた。
ただ 待ち望む子どもができないことが、
段々と夫婦の間に溝を作ってきた。
二人にとっての子どもは、
母親にとって初孫であり、同時にこの家の大切な跡取りでもある。
「赤ちゃんさえ抱かせてもらえたら、いい嫁なんだけどね。」
ここ一年あまり雅彦が実家に寄ると、母親が寂しそうな顔で言うようになった。

高校時代テニス部でダブルスを組み、
同じように医者になった多田に相談したのが半年前、
何かしら手はあるだろうと思っていたが、
医学的に決定的な現実を突きつけら、
消沈した二人の間に、
それまで円満に続いていた夫婦の営みは無くなってしまっている。

「誰にも知られぬように、俺たちの子どもとして生んで欲しい。
多田に相談して医学的な方法をとれば、必ず先で誰かにわかってしまう。
判るね、僕の言いたいことが。」
雅彦の言葉の意味に、驚いたように顔を挙げた順子。

その美しい瞳、可愛らしい唇、
そして、愛してやまない豊かな身体。
自分のものであるその順子を、自分以外のものにゆだねる。
思い考えた先にあった仕方のない回答の傍らに、
自分を恐ろしく興奮させる、そんな愛のかたちがあったことに気づいたのは、
雅彦自身にとって、驚き以外のなにものでもなかった。

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● 思いもよらぬこと

その影は肘を立てると顔を寄せてきた。
思いもよらず口づけを求められたことに 
「いや。」と現実から逃れるように、顔を背け唇を逃れた。
快楽を求めることが今夜の約束ではなかったはずだったし、
愛し合っていて身体を開くわけではなかった。
しっかりとした、心の準備はできていないのに、
ガウンの前を開き脇の下から差し込まれた手の平は、
当然のように左の乳房を覆い、
当惑している身体に、甘ったるい刺激を重ね始めていた。

「はっ 早く 済ませて。」
尋常ではない呼吸の中でやっと掠れた声が出た。
男の人のものを受け入れれば、
女である自分の身体と理性が、あえなく乱れ果てることはわかっている。
主人が望んだこととはいえ、
恥ずかしい痴態をこの人の前にさらけ出す時間を延ばすことは、
できるだけ避けたかったからだ。

順子の言葉に応じるように、
ゆっくりと開かれた両足は膝が胸につくように折り曲げられた。
慶彦が容赦なく自分と繋がろうとする気配を感じた。
もう仕方のないことなのだと諦めたが、
分け入り始めた男のものの熱さを感じた瞬間、
胸板に両手を当てて、僅かな抵抗を試みた。
最後まで本当は良い妻であったことを自分に納得させたかったからだ。
けれど、恥ずかしいほどに密を滲ませうっすらと開き始めていた秘唇は、
やすやすと彼のものを根本まで迎え入れていた。
そして、それは、今までの主人との行為では、
経験のないと思える最も深い奥にまで入り込み、
その一瞬で順子の身体をのけぞらせ、走り抜けるような快感を与えたのだった。

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思いもよらぬ短くも鋭い絶頂に、
けっしてこの人の前で口にしたくなかった甘い声を
思わずあげてしまった順子の身体は、
無意識のうちに、更に深く迎えられるように開き始めていた。


● 取り返しのつかない瞬間

顔を隠していた手の抗いを無視して両側に分けると、
官能的な甘い匂いの中で、
今自分のものと繋がっている兄嫁の裸体を眺め回した。
律動に合わせてたわわに揺れる豊かな乳房、
兄が日頃から自慢にしていた透き通るような白い肌、
そして、今自分のものを迎え入れ、ひくついている濡れた秘唇。
思いもよらぬ宝物を手に入れたことだけは間違いなかった。

興奮していたのだろう、
日頃の物静かな言動からは窺い知れないほど、慶彦の行為は荒々しかった。
これまでの、ただ優しく抱かれていた主人との営みに比べると、
それは暴力的であるとさえ感じられた。
激しく突き動かされた順子の身体は、
何度もベッドの宮台までずり上がり、
そして、引き戻され、そして、更に突かれ続けた。

心だけは貞操な妻でありたいと思うことができたのは、
僅かな時間でしかなかった。
彼の激しい行為に、あと僅かで自分を襲う絶頂を予感し、
思わず慶彦の背中を抱きしめと、
目の前に迫ったこれまでに知らない恐ろしいような快楽を求め、
慶彦の動きに合わせながら腰を振りたててしまっていた。

「いいんだね。姉さん。」
その返事ができないほど、翻弄され続けた順子の言葉を待たないまま、
慶彦は脇の下から回した手で、兄嫁の両肩を抱きしめると改めて覆い被さった。
うっすらと涙さえ湛えたその美しい兄嫁の身体の奥に、
自分の熱いものを注ぎ込む快感をもう我慢することは無意味に思え、
慶彦はその欲望を完結させるために、前にも増して激しく動き始めた。
取り返しのつかない瞬間が迫ったことを察知し、
僅かに良心を戻した順子が、慶彦の言葉に答えようとする間もなく、
唸り声を上げた彼は、えぐるように腰を使いながら、
遂に欲望の液を噴出し始めたのだった。

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自分の体が包み込んでいる慶彦のものが前にも増して固く大きく膨らみ、
暖かいものが身体の奥を満たし始めたことを感じたと同時に、
順子の理性は完全に砕けた。
何の予防もせず彼のものを受け入れることは恐ろしいことだったが、
今だけは、熟れ始めた身体の欲望の方が遙かにまさった瞬間でもあった。
慶彦の首を両腕で抱きしめた順子は、
自分の身体を喜びながら、その奥に大切な液を幾度も出し続ける男の背中に爪を立て、恥ずかしい声を上げながらのぼり詰めていったのである。


恋人同士のように

胸に湧き上がる甘い疼きを感じてうっすらと目を覚ますと、
赤ちゃんのように、自分の乳首を含んでいる慶彦の唇が映ってきた。
思わず柔らかな声を出してしまった自分の眼差しは、
きっと本当の子どもをあやす時のように、優しく穏やかであっただろうと思えた。

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「もう部屋に帰って、静子さんに悪いわ。」
その返事の代わりに寄せられてきた唇を、
当たり前のように迎えることに躊躇はなかった。
何も隠す必要のない裸の身体を繋ぎ合わせたままの二人は、
昔から仲の良い恋人同士のように、
お互いの唇と舌と唾液を長い時間楽しみ続け、
程なく始まった慶彦の動きに合わせ自然に同調する自分の身体を、
順子は当然のことのように許していた。


● 新しい自分

どれだけ抱かれ続けていたのだろう。
雅彦の居るだろう部屋のドアを開けても、
今何時なのか順子にはわからなかった。
数え切れないほどのぼり詰め、慶彦からの愛の液を二度身体の奥に受けた。
およそ半年振りの男の人からの行為に、身体のいたる所が痛んだ。

不思議な心持ちを感じていた。
自分は雅彦一人にだけ抱かれる女だと思っていた。
自分の身体の全ては雅彦だけのものだと思っていた。
男の人は家庭さえ壊さなければ多少のいたずらはしょうがない、
父親もちょっとした過ちを、よく母親に叱られていた。
けれど、女の自分は主人である雅彦以外に、
男の人を受け入れることはとうていできないものと、
当然のように思っていた。

その自分の、今夜の豹変振りはどうだろう。
誰でもない自分が今一番驚いている。
火の出るほど恥ずかしい行為を、
難なく受け入れ、
最後には慶彦の名前を叫びながら、
再び彼が自分の体の奥に、
その大切な液を注ぎ込んでくれることを
願い求め続けた。

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軽い寝息を立てて休んでいる雅彦を起こさないように、
隣のベッドにそっと身を横たえると、ひとつ大きな息を吐いた。
新しい自分を見つけた、と感じさせられた夜は、
とにかく今終わろうとしていた。


● 取り返しのつかない時間

眠れるはずのない夜が明けたことは、
細く開いたカーテンから漏れる淡い陽が、
化粧の途中なのかドレッサーの前に座っている彼女の背中で、
眩しくハレーションを起こしていることでわかった。

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その裸に近い身体は、黒い上下の下着でわずかに隠されているだけで、
そのことが、不思議に瑞々しい白い肌をいっそう引き立てて見せている。

名前を呼んでみる。
予想していたかのようにも見えた彼女は、
視線を合わせないように近づいてくると、
そのまま胸の中に滑り込んできた。

「嫌いにならないでね。」
か細い涙声が、昨夜の出来事を聞くまでもなく物語っていた。

誰にも渡したくなかったものが、一夜であれ人のものになった。
そして、考えていたことと現実になったこととは想像していたものとは違っていた。
そう思うと、無意味とわかっていても取り返しのつかない時間を埋め合わせるように、
乱暴に下着を脱ぎ取り、張り詰めたもの強引に繋げていった。

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これまで経験したことのない異常な高ぶりと、
久しく触れなかった順子の体への欲望を、
一度の放出で鎮められなかった雅彦は、
泣き声さえあげ始めていた順子を、激しく揺らし責め続けていた。


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